NEO-M8PとZED-F9Pの使用すべきユースケース、パフォーマンスを比較する

Jan 20, 2022

概要

ublox 製の GNSS プラットフォームである NEO-M8P と、ZED-F9P の違いが曖昧だったので、まとめます。

はじめに

DJI 機体の GPS モジュールも分解すると ubox 製のチップが入っているくらいにドローンだと基本的に使われているこのチップ(GNSS 受信モジュール)ですが、私がドローンを始めた頃には既に NEO-M8P は流通していて当たり前に存在しているものでした。

調べてるとこの規格も発表されたのは 2016 年だそうで、これはこれで小型化という意味で革新的だったんですね。(知らなかった)

技術的な話

周波数の違い

M8P は、L1 波(1575.42MHz)のみ受信のシングルバンド対応なのに対して、F9P は L1 波、L2 波(1227.60MHz)、L5 波(1176.45MHz)のマルチバンドなので、より高精度な位置測定が可能。
L5 波は妨害電波や混信にも強く、マルチパスにも強いとのこと。実際にグラフで見てみるとその通りな結果ですよね。

  • L5 (1176.45MHz):2009 年に打ち上げられた GPS 衛星 2R-20M より試験が開始された。本格的な運用は 2010 年以降のブロック 2F 衛星の打ち上げ以降となる。L1/L2 に比べて 10 倍のバンド幅で 3dB(2 倍)の尖頭電波強度を持ち、10 倍の長さの拡散コードを使い、信号体系も向上させた民用の 3 つ目の信号。より高精度の位置測定が可能になる。また人命救助等にも活用される他、航空関係者もこれによって、L2 より L5 で通信妨害混信に対して効果的に対応できる。

    Wikipedis より引用 https://ja.wikipedia.org/wiki/GPS%E8%A1%9B%E6%98%9F

サポートしている GNSS の違い

M8P は、GPS、GLONASS、BeiDou のみ対応だったが、F9 ではこれに加えて Galileo、NAVIC(Navigation Indian Constellation)にも対応している。

精度の違い

2D と 3D の positioning 精度については先にも述べたが、対応している GNSS が増えているため精度が上がっていて、単体でもサブメートル級の精度を実現している。

補正データの提供方式について

これは理解深めたいので別記事で掘り下げたいなーと思っていますが、

従来の Observation State Representation という方式だと、モジュールを搭載した機体(移動局)から 10km 以内の RTK Base(基地局)で生成された OSR 補正データを RTCM として送信する必要がありました。

F9P から追加された State Space Representation という方式だと、補正データは衛星から送信されるので、グローバルな補正データにてセンチメートル級測位が実現できるため、空間的なカバレッジが広がるメリットがあります。

ユースケースベースな話

技術的な話を踏まえた上で、じゃあ実際に使用する際にどうやって導入を決めればいいのという話をします。

まず ublox 社のプレゼンから、シングルバンドであれマルチバンドであれ、2D positioning の精度に大きく違いはないですが、3D positioning の精度だと F9P の方が信号が遮断された際の復帰が早いことがわかります。
なので特に都会などモジュールと衛星が遮られる瞬間が多いような場所では、パフォーマンスを発揮しそう。

開けた場所での 2D positioning した際の精度。大きな違いはない。
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街中での 20km 動かした際のテスト結果。途切れてから復帰までが F9P の方が早いのがわかります。また FTK fix のステータスの維持率でいうと倍以上という結果になっています。(すごい..!)
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具体的には ublox がサンプル採取するのにストレステストを実施してるような環境がイメージつきやすい。
ビルの窓点検とかをドローンで自動化するケースなどもあげられそうですね。(あんまり知らないけど)
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結論

M8P を使った方が良い場合

・開けた場所での RTK の使用

F9P を使った方が良い場合

・RTK の使用が今まで難しかったような環境

・RTK の使用が必須なアプリケーション(復帰までの時間が早いため)

参考資料

・ZED-F9P technology deep dive

https://www.u-blox.com/sites/default/files/ZED-F9P-webinar%20presentation%20%28UBX-18047570%29.pdf